ヒュウガミズキ。早春に木々を飾る花は静かな美しさ。
派手さよりもひきつけられるしたたかな存在感。
芽吹きのまえのわずかなひとときを心楽しく。
陽光あふれる華やかな春への序章にふさわしく。
まだそこにはオーケストラの音楽もなく、
集まりだした楽器たちが、
思い思いに調律をするさまのよう。
いろとりどりの協奏曲はすぐに始まる。
まだ小さな声でおしゃべり。
ひそひそ話と、くすくす笑う声…。
期待で胸をはずませて、
幕開けをまつ。
聴衆のざわめきは波が引くように消えて
やがて、歓喜の旋律がなにもかも光で包んでしまうだろう。
瞳を閉じずにその一瞬をみつめていよう。